羅針盤

手のひらを空に向けて、伸びをする。その手の甲をしばし眺める。

羅針盤を与えられた時から、そうするようになった。

私の針は空と地の両方を指している。

どこまでも広がっている空。境目のない空。刻々と表情の変わる空。足がついている地面。歩いていく地面。踏みしめる地面。

体がどこへ行っても、心がこのふたつから離れないように生きる。そうしたら奏でられる。そうしたら紡げる。それは単なる直感だけれど。

 


世界を味わい尽くして死にます、と宣言した私に、かけられた言葉が羅針盤となった。でも、私はその言葉が意味するところを、本当の意味では理解できていない。

だから手を伸ばして、手と空や、手と天井を眺める。

私になにが掴めるか、私がどうそれを捉えられるか、そしてどう言葉を返すことができるのか。分からなくても、芯のところだけは、見失わずにいられますように、と。

 

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